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昆虫ウイルス機能開発室

タンパク質を安定化させたい

カイコ細胞質多角体病ウイルスの多角体へのタンパク質の固定化

昆虫ウイルスの一つであるサイポウイルスは感染細胞の細胞質に多角体と呼ばれるμmオーダーのタンパク質微結晶を形成します。
多角体には直径約70nmのウイルスを取りこむメゾ空間が存在し、また多角体そのものは熱、pH、乾燥に対して極めて高い安定性を示します。この多角体にウイルスが取りこまれる仕組みを明らかにするために、ウイルス表面の突起(turret)を構成しているVP3と呼ばれるタンパク質に着目しました。
その結果、VP3の一部の配列を用いることで、ウイルスの代わりに様々なタンパク質分子を多角体に取りこむ(ここでは固定化と呼ぶ)ことができるようになりました。
また、多角体のX線結晶解析により多角体タンパク質であるポリヘドリンのN末端にあるαへリックス(H1)もまた他のタンパク質分子の多角体への固定化に用いることができることを明らかにしました。

上図は、多角体にタンパク質分子を固定化する流れを示しています。多角体タンパク質と固定化シグナル(VP3あるいはH1)と付けた目的タンパク質を同時に作ると、この目的タンパク質は多角体に固定化され、タンパク質(プロテイン)ビーズができます。

 

タンパク質を固定化したい

プロテインビーズを用いたプロテインチップ

タンパク質分子を多角体の表面に固定化することで、タンパク質の固相化が実現できます。このようにして作られたプロテインビーズをスライドガラスなどに並べるだけで、タンパク質分子間相互作用を検出することができるタンパク質(プロテイン)チップを作ることができます。

図は、様々な抗原タンパク質を固定化したプロテインビーズをスライドガラス上に並べ、抗血清と反応させた結果を示しています。

 

タンパク質徐放剤

プロテインビーズによる細胞の増殖と分化制御

当研究室では、これまでに様々な細胞増殖因子を多角体に固定化したプロテインビーズを作製して来ました。現在、この細胞増殖因子固定化ビーズは20種類以上になりました。これらのプロテインビーズを使って角膜上皮細胞、腸管上皮細胞、皮膚の角化細胞や色素細胞、軟骨・骨などの細胞、血管内皮細胞、ES細胞、(マウスとヒト)iPS細胞などの培養を行っています。また、こういった多角体を使うことで細胞の増殖や分化を制御することができることから、生体内の組織の修復といった再生医療や腫瘍細胞の増殖を制御することで新たな癌治療の開発に貢献したいと考えております。